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 ま、だからと言って何も解決はしていなくて結局またため息を吐く羽目になる。  俺は基本、月、水、木と個別指導塾で講師のバイトをしていて、授業を終えて帰路についた俺は既読にはなっているのに返信のないその画面を見て泣きたくなった。  おはようの挨拶と共に身体を気遣っても無視。  夕方、バイトの前に授業終わりに電話してもいいか確認したのにそれにも返信はない。 「何なんだよ」  電車に乗り込みながらスマホをジーパンのポケットに捩じ込む。  空いてる座席に座りつつ再びスマホを出して画面を見ても、やはり先輩からメッセージはなかった。  仕方なく昨夜先輩に言われてよくわからなかった、『猫が立ってなんちゃら』を調べる。  でも、出てきたのは猫の動画ばかりで俺は頭を捻るしかなかった。 「猫が何だよ」  考えてみたってわからないし、やはり何も反応がないのが堪える。  四月から先輩は短大を卒業して保育士になった。  それで忙しいのはわかる。  保育実習だの何だの、今までも「忙しい」と言われたことはあったから。  でも、そんな言葉であろうと返信はあったんだ。  そして、「なー!タクー!飯行こーぜ!思いっきり食いたいっ!!」そうやってすぐに電話もきていたのに。 「……会いてぇ」  呟いてみても、スマホには何の通知も来なかった。

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