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 父さんが出かけて行くまで城くんはにこやかに父さんの世話を焼いて爽やかに送り出していた。 「いってらっしゃい」 「いってます」  いつも見るやり取りなのに穏やかに笑う二人がこんなにも羨ましいなんて。  俺が見ていないとキスをするのを知っていて、あえて顔を出してやった。  だが、ドアを閉めて振り返った城くんを見てキスさせて少しでも機嫌よくさせておけばよかったと後悔したが。 「今日は大学も午後からだろ?ちょっとこっちに来い」  先輩との甘過ぎた余韻さえ掻き消される気がする。 「あ、えっと城くん」  俺を追い抜いてリビングに入った城くんを呼んでも城くんは振り返らなかった。 「いいから座れ」  ダイニングに促されてそのまま向かい合って座る。  やたら喉が乾いて、でも、下手に動けなくてテーブルの下でグッとジーパンを掴んだ。 「どうせあの先輩のところに居たんだろ?」  素直に頷くとため息を吐かれる。 「拓翔、学生の本分は……」 「ちゃんと大学には行ってるよ!今日もこれから行くし!」 「行くだけか?」  わかってる!そのつもりで遮ったのに低い城くんの声にたじろいでしまった。 「一晩中ヤってた疲れ丸出しの顔してるぞ。付き合うのが悪いとは言わない。でも、ちゃんとセーブできないとお前だけじゃなく相手の評価まで落とすぞ」  酷くダルそうだった先輩を思い出す。  急に不安になって顔を上げると、 「反省しろ」  城くんは少しだけ笑って俺の髪をグシャグシャにしてきた。

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