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「まだ元気ないの?……あ、ごめ」  美玖がパッと口を閉じたのを見て首を傾げる。  まだ電車の来ない駅のホームは人も疎らで静かだ。 「何?」  聞いても美玖は無言でちょんと自身の耳に近い首の辺りを触るだけ。 「は?」 「だからぁ」  言われて見せられた鏡。  よく見えなくて眉を寄せると、美玖はため息を吐いた。 「キスマーク」  耳と肩に近いその二箇所を指しながら言われて慌てて手で押さえる。 「ケダモノ」 「なっ!!」  顔が一気に熱くなって火が吹き出した気がした。 「……ふーん、先輩だとそんな表情(かお)すんのねぇ」  ニヤリと笑われて逃げるように顔を背ける。  少し人が増えてきたのはもうすぐ電車が来るからだろうか。  それでも美玖とは大学も一緒だからまだしばらくは一緒なんだが。 「幸せそうで何より……ね?」  パシンと俺の背中を叩くと美玖は立ち上がった。 「あ?どこ行……」 「うまくいったなら別れた女がいつまでも周りうろついてたら先輩だっていい気しないでしょ?」  振り返ることなく手を振って美玖はホームの先へと歩いていく。  こういうカッコいいところが好きだった。  でも、それが美玖の強がりで本当は泣きそうなことも知っている。 「サンキュ……」  呟いて、俺はその後ろ姿を見送った。

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