しばらくして見えてきた人影。 　一人は先輩だが、もう一人は先輩より頭一つ分以上背の高い男。 　先輩と同じエプロンだから同じ保育園の職員だろう。 　だが、そいつとやたら近い距離と笑顔で答える先輩を見てちょっと妬けた。 　しかも、男の手が先輩の腰に回ってキスでもしたように見えるそれにイラッとする。 「なっ!!」 　思わず車から出ると、二人の目がこっちに向いた。 　離れてこっちに来ようとする先輩。 　だが、その腕が引かれて先輩はまた男の方を向いてしまう。 「関係者……ではないですよね？」 　窺うようなその目。 「あ、いや！僕の後輩です！この後、食べに行く約束をしていてそれで……」 　誤魔化すような先輩の言い方に少しショックを受けた。 　恋人……とは言えるわけないし、確かに後輩なのも嘘ではない。 「……あれ？もしかして……たっくん？」 「は？」 　軽く落ち込みながらため息を吐いた俺だが、まさかの呼びかけを受けて声を裏返す。 　微笑む男。 　その顔は確かに見覚えがあった。 　記憶を辿って……あ、と思いついた人物。 「……春樹(はるき)先、生？」 　頷いて笑う姿は記憶にある先生の姿とピタリと重なる。 　保育園の頃、大好きで……でも、すぐに会えなくなった先生。 　実習生とか知らなかった俺は父さんに何度もいつ会えるかを聞いて相当困らせた。