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そもそもその元彼は先輩の九つ上。
先輩がバイトしていたコンビニによく来ていた客だった。
デートに誘われたとか、付き合うことになった……そんな話を聞いて俺はイライラしていたのに、女とも付き合っていてあっさりとその女と結婚した男。
「あいつ、俺に抱かれながら女も抱いてたんだ。俺だけとか言っといて……信じられねぇよ。ノンケなんて……」
憔悴しきった先輩に俺はただ付き合って一緒に居ることしかできなかった。
もうノンケは懲り懲りだと言う先輩に俺の気持ちなんて言えなくなったから。
それでも溢れた想い。
やっと伝えてとりあえず“お試し”で繋いだのにまた邪魔をする男。
「先輩、こっち見て」
またあの別れを思い出したのか、苦しそうにしている先輩を抱き寄せる。
目を合わせてそっとキスをすると、先輩はギュッと抱きついてきた。
「訳わかんなくなるくらいグチャグチャになりたい」
「……」
そんな先輩に何と言えばいいのか。
「俺がネコでいいから」
「明日も仕事でしょう?」
泣きそうになりながら服を脱ごうとする先輩の手を止めて後ろからしっかり抱き締めた。
「いいから」
「よくないですよ」
「俺がシたいの!」
「そんな誤魔化すセックスなんて後で虚しくなるだけですよ?」
「いい」
先輩の体の向きを変えてしっかり目を合わせる。
涙の溜まったその目元にそっとキスをして少しだけ微笑んだ。
「……ダメです。俺がなりたいのはセフレじゃないんで」
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