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 眉を寄せた先輩。  それでも俺は鼻先にもキスを落として先輩を見つめた。 「本気で先輩が好きなんです。傷つけたくないしもう傷ついて欲しくない」 「……俺、どうしろってんだよ」  ポロポロと涙を溢す先輩をもう一度しっかり抱き締める。 「ここに居るから……今日は寝ましょう?ね?」  涙を拭いつつ背中を撫でて、俺たちはゆっくり横になった。  しがみついてくる先輩を包み込んでただ一定のリズムでその背中を叩く。  次第に先輩の力が抜けてきて、俺も先輩にすり寄って目を閉じた。  しばらくして聞こえてきた寝息を確認してそっとスマホを取り出す。  城くんにメッセージを送ると、意外とすんなりと泊まる許可は下りた。 『優希さんが起きる前に帰って来いよ』  そのメッセージを見て笑ってしまう。 「ありがと」  呟いて俺は先輩をまたそっと抱き締めた。  すやすやと穏やかな寝息をたてる先輩。  だが、その周りにはトラウマを植え付けた元彼や嫌な予感を感じさせる春樹先生が居る。  まだ薄っすらと残っていた涙のあとを拭って俺はそのかわいい寝顔を見つめた。 「……俺のこと好きになってよ」  もちろん眠っている先輩は返事なんてしない。  柔らかい髪にキスをして目を閉じる。  だが、先輩を抱いて眠る幸せよりも、こっちを見てくれない寂しさに押し潰されそうだった。

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