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 早く家を出る先輩に合わせて朝食を用意した俺はそのまま先輩と一緒に食べてから片付けをする。 「……悪かったな。迷惑かけて」  ちょっとしおらしい先輩の腕を引くと、先輩はバランスを崩して俺の胸に飛び込んできた。  受け止めてギュッと少し力を込める。 「迷惑なんて言わないで甘えて下さい。俺、思いっきり甘やかしたいタイプなんで」 「……やめろ」  俯いて俺の胸を押す先輩を逃したくない。 「ヤダ!戻れなくなる」  消え入りそうなほど小さな声。 「別に戻る必要ないでしょう?俺はずっとここに居るから……俺に甘やかされて笑ってて下さいよ」  その頬に触れてキスをしても、 「何言って……」  先輩は戸惑いを隠せないようで眉を寄せたままこっちを見た。 「本気です」 「信じられるか!女を選べる(やつ)は最終的に(そこ)に戻るんだよ!」  今にも泣き出しそうな先輩を抱き締める。 「俺は!って言ってもまだ信じられないんですね?」 「……」 「いいですよ。何回も言うんで」 「は?」  キョトンとする先輩に微笑んだ。 「俺は先輩が好きです」  見上げる先輩にまっすぐ伝える。 「……タク」 「はい。そうやって俺を見てて下さい!大丈夫ですよ。先輩が不安になる分、俺は伝え続けるんで」  笑うと先輩はギュッと俺にしがみついてきた。  その細い体を俺もしっかり抱き締める。  顔を上げた先輩と唇を合わせて、やっと先輩は顔を赤くしながら少し照れくさそうに笑った。

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