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71、第10話「恋人」
やたら厶"ー厶"ーと鳴る音に気づいて目を覚ます。
「あ、タク?大丈夫か?」
「え、あ、まぁ……っ」
答えつつ体を起こそうとして呻いた。
腰がやたら重ダルくて、後ろの違和感が半端ない。
喉も痛いしヒドく涸れていて、正直大丈夫ではなかった。
父さんがあのぎこちない動きをしたり、ダルそうにするのを改めて納得しつつ、何となく先輩の顔を見るのは恥ずかしい気がする。
抱かれた……その感覚がまだはっきりと残っていて、じっとしているのは落ち着かなかった。
「うん、あとこっちな?アラームは止めたのにずーっと鳴ってる」
俺を支えてくれた先輩は申し訳なさそうに水を飲ませてくれてから俺のスマホを差し出す。
画面に表示されているのは城くんの名前で、俺は額に手をついた。
そういえばそうだった。
昨夜帰ってないってことは……だ。
だが、よく見ればいくつもかけてある目覚ましのアラームが何度も鳴っただけ。
城くんからは昨夜メッセージが届いていたのみだった。
シンプルな『泊まるなら連絡しろって言っただろ』ただそれだけ。
「ちょっと電話してもいいですか?」
「あぁ」
頷きながら先輩は俺を支えてベッドに座らせてくれて、腰にも枕やクッションを差し込んでくれた。
それだけでもかなり楽で、慣れているその様子に少し複雑になる。
先輩自身も受けを経験しているのもあるけど、やっぱりそれなりに抱いてきているから。
俺が知っているだけでも……考え始めて頭を振る。
そんなのダメージを食らうだけだから止めた。
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