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「城くん?ごめん」  城くんが電話に出た瞬間に謝ると、城くんはため息を吐く。 『お前、その声……』  言われて喉を擦ったところで声は変わらない。 「……ごめん」  確かに思いっきり掠れていてヒドい声ではある。 『風邪じゃないな』 「うん」 『ったく……迎えが要るか?』 「は?」  思ってもみなかった言葉ですぐ意味が理解できなかった。 『……歩けねぇんだろ?』  言われて昨夜のことがバレていることを確信する。 「いや、あの、えっと……」  そんなのどう答えたらいいのかわからない。すると、 「タク、代わって」  先輩が俺の目の前に座っていた。 『何?』 「城くん、先輩が代わってって」 『いいよ。代わって』  言われてスマホを差し出すと、先輩はしっかりベッドに座り直してから耳に当てる。 「お久しぶりです。瀬尾です」 『うん。健太くんは元気?』  微かに聞こえてくる城くんの声が穏やかでホッとした。そして、 「はい。何度もお世話になったのにご無沙汰してしまって申し訳ありません。それに今回も……」  目の前で話している先輩の声がやけに大人びているような気がしてドキドキする。 『いいよ。君のことは信頼してるつもりだから』 「ありがとうございます。その信頼をこれ以上損なわないためにも、拓翔はこの後僕が送り届けますから」 『大丈夫か?』 「はい。僕は今日も休みなので。城さんは今日お仕事ですよね?」  何となく聞いているのは落ち着かなくて立ち上がろうとすると、先輩に手を繋いで引き留められた。

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