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昼を食べて洗い物をしてくれた先輩。
父さんが城くんに頼まれている買い物に出かけると、俺たちは二人きりになった。
「優希さんって……気づいてるのか?」
ソファーに並んで座って指を絡めると、先輩はこてんと俺に寄り掛かってくる。
「さぁ?言っときます?」
俺はその柔らかい髪を撫でながら幸せに浸っていた。
家に先輩が居る。
寄り添ってまったりしているなんて幸せ過ぎた。
「……結構ナイーブな問題なのに軽いな。お前」
「だって父さんだってゲイカップルなんですよ?偏見も何も自分らだってそうだろ?って話ですし」
顔を上げて目を細めた先輩にキスをする。
軽く触れて離れていく先輩を追いかけようとしたのに、間に手のひらを入れられた。
「いや、そうだけどさ。優希さんはお前の実の父親じゃん?ずっと美玖ちゃんと付き合ってたのも知ってる訳だし……やっぱりショックじゃね?」
「そうですか?」
その手を退かすと先輩はちょっと考えるようにする。
「だって優希さん自身もタクの母さんと結婚してたんだしさ。親ってやっぱ女とって思うだろ?」
言いながら先輩は体も起こして仏壇を見つめた。
そこで微笑んでいる母さん。
もし、母さんが居たら……考えたって俺には母さんの記憶はほとんどない。
「幸せな結婚をって願うもんじゃん?」
「俺は今めちゃくちゃ幸せですけど?」
「お前なぁ……」
ギュッと先輩を抱き締めたらもう止まらなかった。
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