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「ごめーん!遅くなった」
ガチャッと玄関が開く音がして慌てて離れた俺たち。
お互いに軽く乱れた服を戻して口元を拭う。
起き上がって不自然なくらいソファーの端と端に座ってしまって……でも、熱を少しでも冷まさないといけない今、元の位置に戻ることはできなかった。
無駄に数式を頭に浮かべて俺は先輩を視界から外す。
「拓翔ー?荷物ちょっと運んでくれないか?」
「んー?ちょっと待ってー!」
そんなことには気づいていないらしい父さんに答えつつ、何度も深呼吸を繰り返した。
こんな状態で駆けつけられるはずがない。
さっきまでの甘ったるい空気だってまだ充満している気がして気まずいのに。
「……だから、盛るなって」
「先輩もでしょう?」
「……落ち着いたか?」
立ち上がって見せると、先輩は困ったように眉を寄せる。
「こんなかわいい恋人と一緒に居て何もなしなんて無理なんですよ」
「バーカ」
近づいて口を突き出すと、クッションを抱いて誤魔化している先輩に軽く殴られた。
「拓翔?何?まだそんなに腰痛いのか?若いのに大丈夫か?」
それなのに父さんはリビングのドアを開けて、俺は慌てて近づいてその手から荷物を奪う。
荷物で誤魔化しながら運んでいると、先輩が笑いを堪えているのを感じた。
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