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79、第11話「カミングアウト」
月曜日。
朝は『おはよ!行ってくるな!』そんなメッセージが送られてきたのに、その後は返信がなかった。
仕事中は返信なんて無理だろうと思いつつ何度もスマホを確認してしまう。
昼、夕方バイトの塾に行く前、授業の合間……二十一時を過ぎてさすがに返信がないのはおかしいと思い始めた。
時計を見て次の担当の準備をしつつ電話をかける。
『タク、ごめん』
少しかかって電話に出た先輩の声は明らかに元気がなかった。
疲れているというか、泣いていたようにも聞こえる声。
俺は心配で駆けつけたくなるのをグッと堪えた。
「今、家ですか?」
『……ううん』
「え?まだ仕事なんですか!?」
『……違う』
「は?」
眉を寄せた瞬間に周りの先生たちは立って教室へと移動し始める。
「拓翔先生、行きますよ!」
「あ、はい!すぐ行きます!」
声も掛けられて答えつつ、スマホを離せなかった。
『タク、授業 だろ?行って来い!』
「でも……」
聞こえたらしい先輩に言われても口ごもる。
『じゃあ、遅くなってもいいから……終わったら連絡して』
何で先輩はこんな切ない声を出すのだろうか?
「わかりました。いってきます」
『ん、ガンバレ〜』
先輩?声、震えてんの気づいてますか?
何をまた一人で耐えているのか……気が気じゃなかった。
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