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だが、少し体を起こしてリュックのポケットからスマホを出した瞬間に再び着信があって、先輩はテーブルの上に落としてしまう。
俺が拾って見ると、ディスプレイにはただの電話番号が表示されていた。
先輩に確認して顔を背けたのを見てそのまま電源を切る。
そして、スマホを置いてから縮こまる先輩をもう一度抱き寄せた。
「大丈夫。俺がついてます」
ギュッと俺にしがみついてくる先輩に優しく声を掛けて何度もその背中を撫でる。
「……ごめ」
「謝んなくていいですって」
しばらくして顔を上げた先輩に微笑んだ。
「でも……」
「むしろ、会えてラッキーです」
顔を近づけかけて、さすがに|ファミレス《ここ》ではと動きを止める。
それを見て先輩の表情が少し緩んだ。
「唐揚げ、食いますか?」
「お前、俺には唐揚げ与えとけばいいと思ってるだろ」
「えー?」
ワザと戯けると先輩は脇腹に軽くパンチを入れてくる。
「で?何がありました?」
何でもないことのようにアイスコーヒーを差し出すと、先輩は一口飲んでゆっくりグラスを置いた。
「……あいつがうちの前で待ってた」
「は?」
俺も手にしたグラスを持ち上げようとして止める。
「今日、春樹先生に食事に誘われたけど断ってたのをあいつは同じ電車の中で見てたらしくて」
家の前で待ってた?
春樹先生に食事に誘われた!?
舌打ちしかけるのを俺は何とか堪えた。
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