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「優希さんたちの付き合いを見てきたからだって言うなら、僕のせいでもありますよ。僕が中学の頃からゲイなのをタクに打ち明けて相談もしていたので……」
「いや、そんなの関係ないっ!」
「なら、そんなこと言うな」
先輩の言葉を遮ると、先輩にちょっと睨まれる。
座り直してチラッと父さんと城くんを見ると、城くんはまたそっと父さんに話し掛けた。
「優希さん、二人を見て……ダメだと思いますか?」
「……」
父さんのこの反応。
正直イラッとするが、今は耐えた。すると、
「璃央 さんは……知ってるの?」
ゆっくり先輩を見た父さん。
璃央さんは先輩のお母さんだ。
確かまだ三十九歳で若いし、先輩も“璃央ちゃん”と呼ぶので俺たちも名前呼びをしている。
「会ってないので……」
「……そっか」
ぽつりと言うと、父さんは城くんの手を離して手を組んだ。
「……でも、僕がゲイなのは何となく気づいていると思います」
「だろうね」
「は?」
「拓翔」
視線を下げた父さんを睨むと、城くんがすぐに間に入ってくる。
「璃央さん、何回か来たことあるんだよ。『こんなとこに入り浸ってるから息子はおかしくなった』って」
「なっ……」
それまでそっと握ってくれていた先輩の手に力が入って言葉が続かない。
「そんなご迷惑を……」
先輩の声が震えていて俺はもう一方も先輩の手に乗せた。
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