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「その気持ちもわかるんだ。僕も城くんと付き合うのを迷って……ためらった理由の一つがそうだったから」  チラッと父さんが城くんに目をやると、城くんはそっとその背に手を回す。  寄り添う二人は見慣れているのに、いつもの甘さより切なさを感じるのはきっと今の話のせいだろう。 「ゲイカップルが子供を育てるなんて……子供の教育によくない気がした」 「そうやって迷ってる優希さんを無理矢理口説き続けたのは俺だ」 「じょ……」 「だから、そのせいだと言うなら俺に文句を言え」  父さんが遮ろうとしたのもギュッとテーブルの上で組んでいる手に重ねて城くんはまっすぐこっちを見た。 「……二人のせいにする気はないよ。それに俺は先輩がいいだけで……他の男ならちょっと無理だし」  少し冷静になった俺はゆっくり息を吐いてから本音を漏らす。  心配そうな先輩がこっちを見上げたが、微笑んでそっとその頭を撫でた。 「男だとか女だとか……そんなんじゃない。俺は瀬名健太……先輩だから好きだし一緒に居たいから」  思わず抱き寄せると、城くんはコホンと咳払いをする。  親の前で愛おしさが溢れたことにちょっと恥ずかしくなって、パッと離れた俺はただテーブルの下で手を繋ぐだけに留めた。 「さて……優希さん?まだわかんないですか?」  優しく城くんが微笑むと、父さんは一度目を伏せてからフルフルと首を横に振る。 「拓翔と健太くんが本当に幸せなら……僕は反対なんてしないよ」

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