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 帰りは迎えに行くことで決着した俺たち。  大学の講義が終わると俺はすぐに向かいそうになるのを何とか堪えた。  でも、大学のベンチに座ってメッセージだけ送ると、まだ十五時過ぎなのに意外とすぐに返信が来る。 『今日はタクが来てくれるなら早く帰ろうかな?って』  見てすぐに立ち上がるとまたスマホが振動した。 『でも、まだお迎え来てない子も居るだろうから十七時は過ぎるからな』  時間を確認して、でも、そのまま立ち上がる。  このまま大学で待つより先輩の勤める保育園がある駅まで行って待とうと歩き出した。  駅に着いて近くのカフェに入る。 「あれ?」 「げっ」  レジに居た男が振り返って、俺もつい声を出してしまった。  俺の反応を見て、何がおかしいのかくすくすと笑う春樹先生。 「やっぱり、『今は恋人ができた』っていうのは拓翔くんのこと?」 「そうです。だから、飯とか誘ってもらわなくていいんで」  睨んでも春樹先生は悠然と笑みを崩さない。 「まぁ、きみはここで待ってなよ」  肩に手を置かれて振り払うが、強い力で上腕を掴まれる。 「……俺は今からまた健太先生と一緒だし、な」  耳に顔を寄せられてあの低い声で言ってから春樹先生はニヤリと笑った。  舌打ちをしつつその手も払おうとすると、先生はパッと離れてあの人の良さそうな顔で微笑む。 「……お待たせしました」  気まずそうな店員に声を掛けられると、先生はテイクアウトの商品を受け取ってヒラヒラと手を振った。 「あの野郎……」

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