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電車の中、駅、アパートまでの道、玄関……とにかく緊張して、でも、先輩には悟られたくなくて平然を装う。
中に入って急いで鍵を締めたら先輩に笑われたが、それはもう気にしない。
とにかく無事に着いたことにホッと胸を撫で下ろしていると、先輩は笑って抱きついてきた。
「ありがと」
この人は何でこんなかわいいのか。
見上げてくる額にキスを落とす。
二人で微笑み合いつつ今度は唇に触れると、ドンドンと無遠慮にドアを叩く音がした。
ビクッと肩を揺らした先輩の背中を撫でて部屋へと上がらせる。
ドアスコープから覗くと茶色い髪を後ろに撫でつけたスーツの男が立っていた。
俺自身も何度か見かけたことがあるために知りたくもなかったが知っている男。
「健太ぁ〜!居るのは知ってんだぞー?電気ついてんじゃん?出て来いってぇ」
元彼はにこにこと笑いながらまた更にドアを叩く手に力を込めた。
築年数もそれなりのアパートのドアがミシリと音を立てる。
咄嗟にドアを押さえると、先輩は俺の肩に手を乗せた。
「俺が出る」
「ダメです!」
「何?男居んの?いいよ〜!三人でシてもっ!」
薄いドアなんて外に丸聞こえなのか、男は完璧な笑顔を見せてくる。
押し黙ると、男はニヤリと笑って大きく振り被った。
パニックになった俺がドアを背中で押さえると、ドゴッと嫌な音がして背中が痺れるほどの衝撃を感じる。
「あと、二、三発かなぁ?蹴破られたい?」
何でこんな勢いで殴っているのに平然としているのかがわからない。
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