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「いやっ!もー本当に帰って下さいっ!」  ドアに背中をつけたまま震える膝を奮い立たせて叫ぶ。 「んー?とにかく開けてよっ!話しよ!なっ?」  優しい声音で言われても背中にはまだ痺れが残るほどで、さっきまでの恐怖は簡単には拭えそうにない。なのに、 「タク、退いて。マジで実力行使してくるから……お前には怪我して欲しくない」  先輩に腕を引かれて、それには首を横に振る。 「俺だって先輩にこれ以上怪我して欲しくないんですよ!」  精一杯伝えると、またゴンゴンと拳で叩いてきた。 「あのさぁ、お前らの話し合いとかどーでもいいんだわ。俺、マジで溜まりまくってんの。健太?俺、後ろねぇとイケねぇの知ってんだろ?お前がそうしたもんな?」 「ふ、風俗でも行けば……」 「俺、既婚者よ?そんなんに金使えねぇし、妊娠中の妻、家に残して風俗とか……バレたらヤベェだろ?」  俺の震える声にもケラケラ笑って答えられる。  ヤバいならなぜ帰らないのか。  前もそうやって自分勝手に先輩を捨てた癖に。  どうやって追い返せばいい?  どうやって説得したら聞いてくれるのか。  どうやって……。 「眞一郎、無理だよ。俺の彼氏は今、タクだけだから」  目の前に居る先輩がドアの向こうにはっきりと言い切る。  目を見開く俺に微笑むと、先輩は俺がさっき急かして脱がせた靴を履いた。

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