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「ふっざけんなよ!」
「今、開けるから待ってろ。ドア壊されても困るし、声だって……近所迷惑だ」
怒鳴った男にも先輩は冷静に返す。
「タク、退いて」
「ヤです」
「いいから」
「ヤダ……」
思わず泣きそうになると、先輩は両手を伸ばして俺に縋りついてきた。
首の後ろに回された手に引き寄せられて口を塞がれる。
そのまま舌を挿し込まれて意味がわからなかった。
今、こんな状況でどうしてこんなキスを?
思うのにふわふわと多幸感も感じてしまって力が抜ける。
「待ってて、な?」
にこっと笑って抱き締めてから、先輩は俺をその場に座らせた。
先輩の背中を見てその腕を引きたいのに、先輩はためらうこともなく鍵を開けてしまう。
その瞬間凄い勢いでドアが引かれて、でも、素早く腰を引くした先輩は体の捻りを使って全体重かけるように腹に拳を打ち込んだ。
「ぐっ、う……て、め……っ」
呻いて膝を折った男を先輩は右手をプラプラさせながら見下ろす。
「こういう一発なら付き合ってやるぞ?」
低いその声は直接言われてもない俺でもゾクッと寒気がした。
「フザけてんのか?」
まだ立ち上がれないらしい男は先輩の足を挟んだ向こう。
「どっちが?」
どう見たって半端なく痛そうで……俺はこんな強い先輩を見たことがなかった。
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