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「声を掛けてきたのも、受けをやってみたいって言ったのも、女と二股してんのバレて『じゃあ、別れて!』ってケラケラ笑って出てったのもあんただろ?」 「何、お前そんなん気にすんの?」  ケホケホと何度か噎せてから男がゆらりと立ち上がる。 「何でも『いいよ』って笑ってたのに?」  スーツを整えると、ドアに手を付いて身を屈めながら先輩の顔を覗き込んだ。  先輩の表情は俺からはわからないが、グッと握られた拳に力が入るのはわかる。 「せ、先輩の優しさにつけ込んで好き勝手したのはあなたじゃないんですか?」  情けないことに声を裏返しながら言って立ち上がった俺は先輩の腕を引いて俺の隣にした。 「何、お前……震えてんじゃねぇか。怖いなら下がっとけよ?」  ニッと笑われて恐怖も限度を超えたのか逆に冷静になってくる。 「……奥さん抱いて妊娠したから任務完了!今度は抱かれて自分の欲を満たしたいって?」 「あ?」  至近距離で睨まれてもそのまま動かず見返した。  先輩が手を握ってくれて、それを本当に守りたいと思う。 「退け、クソガキ」 「そんな十も下のクソガキでも解ることが解らないあなたに、これ以上先輩を傷つけられたくないんですよ」 「はぁ?」  歯を剥き出しにして凄むこの男が哀れに見えた。 「先輩を殴ったことも、優しさにつけ込んで好き放題したことも許しません」

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