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 あの強さは誇るようなものではない。  先輩が今まで生きてきた間にただ身に付いてしまったものだ。  すぐ側にあった先輩の腕にそっとキスをすると、先輩はキョトンとした顔をする。 「やっぱ抱きたい、です」 「お前な、どんな思考回路してんだよ」  笑う先輩の頬に手を伸ばすと、先輩は擦り寄ってきてそっと目を閉じた。  柔らかいその頬をただ撫でて、伏せられていることで更に長く見える睫毛を見つめる。 「先輩に俺を刻みつけたいって……」  触れたくなって睫毛にも指を伸ばすと、先輩は大きな目をゆっくり開いた。 「マーキングかよ」 「あぁ!いいですね!」  軽く吹き出す先輩に向かって真顔で答える。すると、 「よくねぇよ!」  先輩が体を起こして俺の上から退いた。  聞いてもらえなかったとしょんぼりしつつ俺も起き上がると、立ち上がった先輩はそのまま上を脱いで歩き出す。 「先輩?」  引き締まった腰。普段はシャツに隠れている背中は白くて、首と腕は少し焼けているのがやけに色っぽく感じた。 「シャワー浴びてくるから……遅くなるって優希さんたちに連絡しとけ」 「いいんですか!?」  自分でもわかる。  きっと今、俺は尻尾でも生えてブンブンと振っているんだろう。 「っ、嬉しそうにすんな!……バカ」  そうやって少し赤くなった先輩なんて……今すぐ捕まえて押し倒してやりたい。  

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