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「好きになるクセに告らないし……かと思ってたらいつの間にかアプリ使って経験だけしてるし」 「う、うるさい!」 「本当危なっかしい」  俺の胸にくっついているその頭をそっと撫でる。 「あいつの後のは俺も知りませんが……」 「もう、いいから」  こんな止めて欲しそうにされると意地悪をしたくなるのだが? 「俺も引くくらいですからね」 「え?」  ビクッとした先輩と目を合わせてからゆっくり笑う。 「元彼(あいつら)のこと名前まで覚えてるとかどんだけ好きなんだ?って思いません?」 「あ、そっち……」 「どっちだと思ったんですか?」 「いや……」  口ごもる先輩をじっと見つめた。 「俺の愛も重いでしょう?だから、先輩も思うままにきてくれていいですからね?」 「何だそれ」 「俺は何度求めてきたってむしろ嬉しいですし、『会いたい』って言われたら喜んで走って行きますよ」 「お前、何でそんなの知って……」 「何度先輩に呼び出されて愚痴聞いたと思ってるんですか?」  ちょっとギョッとした先輩に笑いかける。  元彼やその日限りの男に言われて傷ついてきた先輩。  俺はその度に飯に誘われて話を聞いてきたから。 「だから、もう一回……シます?」  先輩を浴室の壁に背を付かせて片脚を上げさせる。 「容赦ねぇな」 「愛してるんでね?」  笑うと、先輩も顔を綻ばせて身を預けてきた。 「うん……もっと、愛して」  先輩にはどれだけ愛を伝えても足りない。

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