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127、第16話「幸せじゃね?」

「ヤベ……」  目を覚ました俺はあまりの怠さに起き上がれずベッドで仰向けになってぽつりと零す。  その声の掠れ具合も笑えない。  時計なんて置いてないこの部屋でもう一度脱力したままゆっくり息を吸った。  とっくに出勤したのか先輩の姿はない。  だが、感じる先輩の匂いにフッと笑みを漏らしてしまう。  閉めておいてくれたらしいカーテンに目を向けた。  漏れている日差しも聞こえてくる外の喧騒も……とっくに朝とは言い難い時間なのだろう。  関節を軋ませながら起き上がってスマホを手に取った。  時刻は十四時を過ぎていて笑ってしまう。 「マジか……」  確かに今日は休講で大学はない。  でも、(バイト)はある。  愛され過ぎたその名残りを感じながら、スマホを置いて何とか立ち上がった。  シャワーを浴びに向かうと、途中で冷蔵庫にメモが貼ってあることに気付く。 『ご飯用意しといた♡なんて甘いの無理だったわ(笑)ごめん。何もない』  それが先輩らし過ぎてむしろ嬉しかった。  先輩のかわいい文字をなぞって何度も読み返す。  このニヤけが止まらないくらいの幸せ。  俺も先輩に感じてもらえているだろうか?  そういえば……思わず手を後ろに伸ばしたが特にベタつきも気持ち悪さもない。  パンツを穿いていたのもよく考えたら……先輩が穿かせてくれた以外考えられなかった。  ということは……掻き出された? 「っ……」  恥ずかし過ぎて崩れるように床に頭を付ける。  想像して堪えられなくて……そのまましばらく動けなかった。

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