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 シャワーからあがったらもう十五時を過ぎていて意外とゆっくりもしていられなくなった。  一度家に帰って着替えてから、作ってあるプリントを持ってバイト先まで行かなければいけない。 「間に合うけどさぁ……」  問題はこの声。  個別指導塾で座って生徒二人と向き合うだけなので節々の痛みは何とかなる。  まぁ、長時間座っているのはキツいから、資料だの何だの取りに立とうとは思うけど。  でも、声ばかりは何ともならない。 「マスクかなぁ?」  風邪と思われた方がまだマシな気もする。  ただ、これから追い込んでいくこの夏に体調不良は嫌がられるかもしれない。  そう思うと受験本番となる冬はちょっとした咳さえ気を遣うため…… 「エッチお預け?」  言いながら絶対嫌だと思った。  先輩を抱くのはいい。  かわいくて、もっと感じさせたくなるし、先輩を乱しているというあの征服感は堪らない。  眉を寄せて見上げてくるあの目、吐息、切羽詰まった声。  ゾクッとして反応しかけた下半身はフーとゆっくり息を吐き出して自制した。  だが、先輩に抱かれるのもいいと思う事実。  かわいかった先輩が見せる雄の顔。  あの目で見られるとドキドキして、あの低さの声で囁かれると何でも従ってしまう。  ちょっと苦しいのに堪らなくて、快感が大きいのも受け(こっち)な気がする。 「ヤベ……」  もう自制さえ効かないほど張り詰めた下半身を見て俺は手で顔を覆った。

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