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「ねぇ!何か言いなさいよ!」
璃央さんの怒鳴る声を聞いてビクッと肩を揺らしてしまった。
「待って、璃央ちゃん。ここでは目立つから……せめてどこかお店に入ろう?」
先輩は後ろに手を回してくれてトントンと僕の腕に触れてくれる。
あまりにも情けなくて消えてしまいたいのに、先輩はこんな時でもちゃんと俺のことを気遣ってくれた。
「無理。そんな暇ないわ。それに……気持ち悪いから健太から離れてくれる?」
先輩との身長差を考えたら真っ直ぐ立てば璃央さんから俺は見えるだろう。
だが、俺は初めて掛けられたこんな否定的な言葉にただショックを受けていた。
物心つく前から家には父さんと城くんが居て、男同士で愛を育むのもおかしいと思うこともなかった俺。
美玖にも「先輩のこと好きでしょ?」そう指摘されてすぐに戸惑いもなく認められたし、美玖も応援してくれたから。
こんな鋭い拒絶だけの反応は初めてだった。
「璃央ちゃん、それ以上言うならさすがに怒るぞ」
先輩が目を細めて、璃央さんが口を閉じる。
「水商売の女が一人で子供なんて育てて、ロクな子供が育つわけない」
「なっ!!」
「言われてよく怒ってたよな?どんな環境だってちゃんと育ててみせるって言ってたのは誰だよ?」
先輩の声がいつもよりかなり優しいのはそれだけ力を込めてあらゆるものを抑えつけているからかもしれない。
強張る背中から手を離すと、振り返った先輩はにこりと引き攣った笑みを見せた。
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