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 璃央さんのスマホが鳴って、鳴り止まないことに焦れて出た璃央さんは画面を見て慌てて逃げるように去って行った。 「……なぁ、タク」  その後ろ姿を見て口を開いた先輩。  震えている声を聞いて、俺はしっかりその手を握った。 「行き先変更していい?」  先輩は握り返して少し不安そうな目を向けてくる。 「もちろん!どこでも一緒に行きますよ」  微笑むと、先輩はホッと息を吐きつつ、やはりどこか緊張しているような表情を見せた。  買い物なんて気分ではなくなったし、何ならこのまま帰ってゆっくりお茶を飲んでもいいとも思う。  でも、どこかへ先輩が向かおうとしているなら……それはちゃんとついて行かないと、と思った。  もう先輩が傷ついて我慢しているのを見逃したくはない。  あんな実の親に身体を軽く扱われても何でもない風を装っていたなんて。  不意に先輩の足が止まって俺も歩くのを止める。  着いたそこは不動産屋だった。 「……ヤベぇな。……緊張する」  ふはっと笑う先輩が少し震えている気がする。 「無理してません?」 「見てわかっただろ?璃央ちゃんは変わんねぇ」  顔を覗き込むと、先輩は困ったように眉を寄せて笑った。 「……まぁ、そうでしょうけど」 「だから、ついてきてくれるか?」  頷く代わりに手を握って足を踏み出すと、先輩は強く握り返してくる。 「さすがに痛いですって」 「でも、離してやんねっ!」  このかわいさ……守り抜きたい。

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