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143、第18話「踏み出した一歩」

「俺の部屋戻ったらベッドの横にある棚、開けてみ?」  不動産屋でもらった資料を抱えて不意に口を開いた先輩。 「あれ棚って言います?ゴムとローションが入ってるやつですよね?」  思い出して答えると、先輩はその封筒で俺の頭を叩いてくる。 「一応ボックス並んでんだから棚だろ!しかも、そこじゃねぇよ。一番上……空の封筒入ってるから」 「……は?」  先輩を見ても、先輩は見えてきたアパートに向かって走り出してしまった。  追い掛けて鍵を開けている先輩に追いつくと、先輩はドアを開けて中に促す。  俺は靴を脱いでそのままソファーベッドに近づいた。  確かに、この一番上にゴムがないのは取りにくいと思ったことが何度かある。  一度振り返ると、先輩は靴を脱いで小さなキッチンで家を出る前に作った麦茶を注いでいた。  目を戻して一番上のボックスを引く。  確かに出てきたのは空の封筒。 「な?中身ないだろ?」  先輩にグラスを渡されて受け取りつつ、その封筒を渡す。 「それってもしかして……」  こんな嫌な予感は外れて欲しい。  だが、何となくそうだとわかってしまった。 「ここに二万入れとくと、璃央ちゃんが持ってくんだよなぁ」  ヒラヒラと封筒を振って先輩が笑う。  どこまで搾取すれば気が済むのか。  顔を合わせないだけでここには来ていたなんて。 「タク!そんな顔すんなって!」  その封筒を投げて先輩は俺の両頬を両手で包む。 「俺も何だかんだ依存してたんだよ。金さえ渡していれば璃央ちゃんは俺を必要としてくれるって」

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