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「あれ?」  駆け付けてくれた父さんの横には城くんも居て首を傾げる。 「……お店うまくいってねぇの?」 「日曜日の昼過ぎなんてめちゃくちゃ忙しいわっ!」  瞬間俺の頭を叩いてガシガシと髪を掻く城くん。 「じゃあ、何で……」 「何で?それだけ大事だからだろ?」  当たり前のことを聞くな、と言われて先輩は深く頭を下げた。 「ありがとう、ござい……ます」  その顔を上げさせて涙の滲む目元を指で拭う。  微笑むと、先輩もはにかんだ笑みを見せた。 「てかな、ずーっと気になってたんだよ。あの母親の名義でアパート借りるのは……だから、何でも頼って来い!ね?優希さん」  なぜ城くんは父さんと手を繋いだのかは分からないが、父さんが赤くなりつつも頷いたからとりあえずツッコむのはやめておく。 「ありがとうございます。優希さん。城さん」  先輩がもう一度頭を下げると、城くんはトントンと軽く先輩の肩を叩いた。 「健太くんも息子みたいなもんだから!本当気遣わなくていいからな?」  優しく微笑む城くんを見てちょっと笑ってしまう。 「息子みたいなもんって」 「そうだろう?拓翔とこの先も一緒ってことは僕たちの息子だよ?」  大袈裟、と言おうと思ったのに父さんにも真顔で言われて口を噤んだ。  先輩は驚いたような、でも嬉しさと恥ずかしさを滲ませている。 「やっぱりタクの家族はいいな」 「でしょう?だから、ずっと一緒に居て下さいね」  抱き締めようと伸ばした手は呆れたような顔の城くんに叩かれた。

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