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147、第19話「★好きが溢れて」
新しいアパートを契約して約一ヶ月。
「で?何でここに戻って来たんですかね?」
先輩の元々のアパート。
しかも、ベッドに押し倒されていて焦る。
ついさっきまで新しいアパートでまた増えた家具を並べて向こうで夕飯も食べたのに。
引っ越すことを璃央さんに悟られないようにソファーベッドと冷蔵庫は残しておいて引き渡し当日の明日の朝に処分することになっていたからか、元々物の少ないこっちの見た目はほぼ変わっていない。
「タクが夏休み中だから泊まって引っ越す手伝いするって言ったからだろ?」
「いや!もう向こうの方が色々揃ってるんだからそっち……」
俺の言葉は先輩の唇で塞がれてしまった。
「もう遅いんだから静かにしないと隣に聞こえる」
やっと離れた先輩は前髪が俺にかかる距離でニヤリと笑う。
「それか……何?聞いてもらうのか?」
くすくすと笑いながら俺のシャツを捲って……でも、完全には脱がせてくれない先輩。
頭は抜かれたが両腕に絡んだままそのシャツを頭の下にされる。
「はぁ?」
嫌な予感しかしなくて腕を動かそうとすると、先輩はその頭と腕の間にクッションを差し込んだ。
お陰で腕が上に上がったまま動かせなくなる。
「ちょっ……」
しかも、開かされた足の間には先輩が居てどうしようもない。
「最後の夜なんだしいいじゃん。……それにこうやって聞かれるかもって声を抑えるのも今日で最後だぞ?」
「だから、そんなことしなくても……」
「興奮してるクセに?」
妖しい笑みを浮かべた先輩が俺の下半身に手を伸ばす。
隠しようもない程にテントを張っているのを見られて、俺はそっぽを向いた。
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