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「タク先生?いや、花咲先生か?……塾では何て呼ばれてんの?」  一緒の湯船に浸かって俺の足の間に居る先輩は凭れ掛かるようにこっちに顔を向けてくる。  風呂とトイレも別になってこうやって湯船に浸かれるようになったのは大きい。 「んー?基本は花咲先生ですかね?拓翔先生って言う子も……まぁ、それは他の先生たちがそう呼ぶからですが」 「そっか!タクもそこの塾生だったんだっけ?」 「えぇ、先生の一部は未だに生徒扱い抜けないですよ」  ため息を吐くと先輩は完全に俺に凭れ掛かってきて目を閉じた。  濡れた先輩の睫毛も少しピンクに染まった頬も……先輩の腰から腹に掛けて手を回す。 「うちの保育園の子たちがタクの教え子になったりもするかな?」 「まだその話続けます?」  前にやった手でギュッと抱き締めると、先輩は笑って俺の頬に触れてきた。 「感慨深くない?」  どうやら今は先生モードらしい。  軽く誘ってみてもノって来ない。 「そうですか?」  ちょっとおもしろくないが、先輩は俺に凭れたまま完全に脱力する。 「そうだろ?だって、今俺のクラスの子たちが卒園したらちょうどタクも新卒で、タクの小学校行ってタクのクラスになるかもじゃん?」 「それは俺が即採用試験受かって新卒でその学校に先輩の子たちが入学してきて、俺が一年生の担任になって……相当の確率ですよ?」  嬉しそうに話す先輩を見て笑ってしまった。

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