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「先輩……シます?」
「……ってバカっ!!そんなことしてる時間なんかねぇわっ!!」
一瞬いい雰囲気だったのにバチンと顔面を叩かれて甘い空気なんて吹き飛んだ。
「優希さんと城さんが待ってるだろーがっ!!」
「えー」
「うるさいっ!早く準備して行くぞっ!!」
急かされてネクタイをサッと結び終える。
すぐに離れていく先輩を恨めしく思いつつ、ジャケットまで羽織ったその姿が新鮮で見つめてしまった。
「ほら!急げって!」
ボスッと軽く腹を殴られて口を尖らせる。
「ここから三十分もあれば着きますって……それに俺、今日誕生日ですけど?」
少し拗ねたフリをしてみると、パタパタと走ってきた先輩が俺の肩に手をついて背伸びをした。
チュッと音がして離れていく唇。
「……二十歳、おめでとう」
少し顔を赤くするその姿がかわい過ぎて、ガバッと勢いよく抱き締めた。
「……我慢したくない」
「するんだよっ!!もう大人だろーがっ!!」
ダンッと足を踏まれてその容赦のなさで蹲る。
「無理ですー」
「知らんっ!!」
クルッと向きを変えて先輩が準備を進めていった。
でも、こっちを見て戻ってきた先輩は俺の目の前でしゃがむ。
「ほら……行くぞ?」
手を出されてそこに手を乗せると、先輩はにこっと笑みを見せた。
「……かわい過ぎる」
「バーカ!帰ってきたら……な?」
グッと堪えたのにどうして先輩はそんなに俺を煽るのだろうか。
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