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なぜか降りていくエレベーターの途中で先輩に手を引かれて降りて、頭の中はハテナでいっぱいになる。
「ん?帰らないの?」
聞くと、先輩は頷いて俺の手を引いた。
父さんと城くんも笑顔でさっさと扉を閉めたし、よくわからない。
キョロキョロと番号を確認しながら歩く先輩は一番奥まで歩いてやっと足を止めた。
そのままさっき父さんたちがくれた封筒を出してそのカードを刺す。
「へ?」
ドアを開けられて先輩の顔を見ると、先輩は少し赤くなって笑った。
「……俺たちが泊まるように部屋を取ってくれたって」
一緒に中に入ってパタンとドアが閉まると、先輩はぽつりと言ってこっちを向く。
大きなベッドが二つとテーブルに置かれた二つの包みとメッセージカード。
“拓翔、Happy Birthday!”と書かれたそのカードを見て再び先輩を見ると、
「それは優希さんと城さんから」
先輩はこくりと頷いた。
「で、これは俺から」
歩いてきた先輩が俺の目の前に小さな箱を差し出す。
「待って!俺もっ!!」
俺も箱を取り出すと先輩は数回瞬きをした。
「先輩!ちょっとタイム」
先輩に俺の持っていた箱も渡して目に入った冷蔵庫に走る。
二度ベッドや棚に足をぶつけたが、冷蔵庫のドアを開けてミネラルウォーターを半分ほど流し込んだ。
フーっと息を吐き出してから戻る。
「……もしかして、同じこと考えてました?」
先輩の手から先輩が出してくれた箱を受け取ると、先輩はくすくすと笑い出した。
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