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第3話
店内は静まり返る。
が、男は「お金は大切なのに」と呟くと、ノソノソそれを拾う。
壮五は目の前で起きた喧騒にドン引きしつつ、「あの、」と男に声をかけた。
なぜならこの男は自分のせいで彼女に誤解をされてしまい、そのせいで今別れたようなので。
「ごめんなさい、俺のせいで……。」
「ああ、いや、全然。でもビックリした、あの子アミちゃんじゃなかった。」
「……」
「……あ、どうしよ。家無くなった……」
それ程重要なことでは無いかのようにポツリと言葉を落とした男は、チラッと壮五を見上げる。
壮五はうっ、と顔を顰めたが、罪悪感があったので溜息を吐くと覚悟を決めて男を見た。
「……ウチ、来る?」
「行く!」
男は嬉しそうに笑う。
その顔は少し憂いを帯びたような、そんな綺麗さがあった。
■
男──結心は自己紹介をすると、拾ったお金で飲食代を払い壮五の後ろについて歩いた。
壮五は気が乗らないまま、結心を自宅まで連れて行き、一先ず風呂に入ってから話をしようと、彼に風呂に入るよう促す。
「え、先にいいの?」
「うん。着替えは置いとくから……あ、ちょっとサイズが小さいかもしれないけど……」
「大丈夫。ありがとう」
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