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第5話

「え……あれ、違った? 家上げてくれたし、いつも皆話あるって時、付き合おっていうんだけど……」 「ち、違うわ!」 「あいてッ」 壮五は思わず結心の頭を叩いた。 顔を真っ赤にして、口元を手で覆う。 ──ファーストキスだったのに……! そう、実は壮五、恋愛経験殆どゼロである。 辛うじて付き合ったことはあるが、セックスは愚かキス一つしたことすらない。 「えー、でもなんでそんなに怒んの。キスのひとつくらいいいじゃん」 「っ、お、お前にとってはよくても……!」 「もしかしてさ、ファーストキスだからとか言っちゃう?」 「〜っ!」 「あ、マジか。え、何で?お兄さんカッコイイから付き合ったことくらいあるでしょ。」 結心の言う通り、壮五は顔が整っていた。なのでしっかりとモテていたし、付き合って欲しいと言われた数は……もう数えてもいない。 そんな壮五がキスをしたことも、ましてやセックスもしたことがない理由──それはゲイだからである。 誰にも言えない秘密だった。 両親も知らない。なので今も会う度に「早く彼女を連れておいで」と言われる。 少し思い詰めた顔をした壮五に、結心は何となく理由を察し、そっと壮五の手を取った。

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