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第9話
そしてそういった日には特に、壮五が結心にキスを強請った。
数を重ねる毎に上手くなっていく壮五のキスに、結心は『可愛い』と思う。
『俺が一から全部教えてあげたんだ』と思うと、もっとキスしてあげたくなるし、抱きしめたくなる。
そんな感情を思い出した結心は、「あら?」と言葉を落とし小首を傾げる。
「あらぁ……俺もしかして、壮ちゃんのこと好き……?」
結心はこれまで『恋』をした事がなかったので、『好き』がどういったものかはわからなかった。
だが今頭の中を満たすのは壮五の事ばかりで、考えれば考えるほどに胸が高鳴る。
これはもしや!と思い早く家に帰って壮五の帰宅を待った結心。
そして「ただいまぁ」と疲れた様子で帰ってきた壮五に尻尾を振って駆け寄る。
「おかえり。お疲れ様」
「あ、うん。ただいま。結心もお疲れ。」
「ねえ壮ちゃん。話がある」
「え……何? 遂に家出るの?」
壮五はそう言いながら悲しそうな顔をした。
またそれだ。結心は唇をへの字に歪ませると、壮五の肩を掴んで優しくキスをする。
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