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第29話
「あー……次の日が休みの時……金曜と土曜の夜なら頑張れるから、それまで我慢してほしい。」
「え、ホント?」
「うん。あ、でも……激しすぎるのは無しで。」
「うん!」
結心は壮五の言葉に満足すると「あがろっか〜」と壮五を抱き上げてお風呂を出た。
■
壮五はああは言ったのだが、その週の金曜日は死ぬ程残業をしていた。
客先でトラブルがあり、その対応に追われていたのだ。
漸く会社を出れたのが午後十時。
きっと結心は怒ってるだろうな……とビルを出ると、雨が降っていて激萎えした。
「最悪……傘無いって……」
──近くのコンビニまで走るか……?
そして走り出そうとした時「お疲れ様ぁ」とトロトロ甘い声が聞こえて、驚いて顔を勢いよく上げた。
「ゆ、結心……?」
「うん。結心でーす。お迎えに来たよ。」
結心は傘を差して立っていた。
バケットハットを目深く被り、マスクをして顔はほとんど隠れていたが、壮五の傍に来るとマスクを外してニコニコ笑う。
「何でいんの!?」
「えー、ちゃんとメッセージ送ったよ。雨降ってきたよ〜とか、まだ帰りそうにない〜? って。」
「ぁ、ごめん、見てない……」
「いいよ、忙しかったんでしょ? 夜遅いし、壮ちゃん一人じゃ帰る時寂しいだろうなって思って、来ちゃった。だから一緒に帰ろ?」
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