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第30話

コテン、と小首を傾げる仕草。 それがやけに似合っていて、壮五は胸をキュンとさせる。 「……それ、今まで他の女の子にしてたんだろ。帰り遅いから迎えに行くよって」 「え〜……? あはは、意地悪言わないで!」 「……俺にそんな事しなくてもいいよ。別にそうされなくても結心のこと好きだし。」 今度は結心が心を跳ねさせる番だった。 確かにこれはよく遊び相手だった女の子に早々に切られない為にしていたことだ。 ただ今回は別に、切られないためにと思ってした行動ではない。 純粋に壮五が疲れきって倒れてしまってないか、雨でびしょ濡れにならないかと心配しての行動で。 「俺も壮ちゃん好きだよ。だからたまにはこういうのも良くない?」 「うん。迎えに来てくれてありがとう」 「じゃあ、はい! こっちにおいで〜。」 「え、傘二本無いの?」 「? 無いよ? こういう時は相合傘でしょ。」 どうせ迎えに来るなら傘をもう一本持ってきて欲しかった。 壮五はそう思いながらも、濡れるよりはマシだなと結心の傘の中に入る。 「それにさ、雨の日って傘に水がぶつかる音で声が聞こえにくいじゃん? 壮ちゃんの言葉を聞き漏らすの嫌だから、くっついておきたいんだぁ。」 「……結心って本当、人たらしだな。」 「それっていい意味?」 「さあな」 二人はそうして家に帰っていく。 壮五は濡れることは無かったが、帰宅した結心の右肩はぐっしょり濡れていて、壮五はまた結心に心をキュンキュンさせられることとなった。

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