39 / 54
第39話
■
「暫くセックスしたくない」
「はぇ……?」
翌朝、壮五は怒っていた。
ベッドから動けない。それ程体が怠い。
「ぇ、なんで……?」
「『なんで』!? え、マジで言ってんの? わかんないの?」
結心は本気で意味がわからないようで、キョトンとして小首を傾げる。
壮五は枕を掴み、それを思い切り結心に投げ付ける。
結心はヒョイっとそれを躱して「どしたのよ」と何も無かったかのように聞いた。
「〜っ! 俺は、やめてって……無理って言った……!」
「え〜?」
「自分勝手にするなら、暫くシたくない……。」
段々と声が小さくなっていく。
壮五は結心と目も合わさずにいたのだが、結心がズンっと傍に寄ってきて無理矢理視線を合わせてきた。
「!」
「でもさ、壮ちゃん、ああいうの好きでしょ?」
「な……っ!」
「だってね、中キュンキュンしてたし、ああやって追い詰められるくらい気持ちいいの、正直堪んなかったでしょ?」
「っ、」
結心の言葉を壮五は否定できなかった。
なぜなら壮五はこれまで、恋愛をしたことがなかった。
知識だけはあった方がいいと恋愛漫画を読んだり、それこそボーイズラブものを見たこともある。
そこで結構な頻度で激しく抱かれるシーンを見た。
正直言って、憧れではあった。
苦しいくらい気持ちいいのって、どんなのだろうと。
何も言えなくなった壮五は、結心をキッと涙目で睨みつける。
「あは、か〜わい〜!」
「ンっ!」
結心は壮五に濃厚なキスをして、彼の大好きな上顎を優しく刺激した。
そうすれば壮五は簡単にトロトロになったので、結心はムフフと笑って「そーうちゃん」と名前を呼ぶ。
「俺とのエッチ、好き?」
「ん……好き……」
壮五が甘えるように結心の首に腕を回す。
「キス、もっとして」
「うん」
結心が壮五に覆い被さる。
その日一日、二人はベッドの上で過ごした。
ともだちにシェアしよう!