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第49話

「あとさ、お前が会社に迎えに来てくれる時、よく同僚がキャーキャー言ってるよ。」 「あらぁ」 「……見た目のことで、何か嫌味言われた?」 「ううん。そうじゃなくて……さっきの相談の話になるんだけどね」 そこで壮五は結心からモデルの話を聞いた。 途中からあんぐりと口を開けて固まっていたが、とりあえず全てを話してしまおうと、結心は話し続け、最後に「壮ちゃんがヤだったら、元からそんなに興味無いし、モデルはしないでおく。」と言って口を閉じた。 「ぇ……え? 結心がモデルになんの?」 「会社のね。ちょっと出るだけ。イメージに合うとか何とか」 「そっか。……え、でもさ、それって俺が決めることじゃないよ。俺が嫌って言ったらやめるとか、そういう決め方は良くない。」 壮五は苦笑しながら言う。 結心はそれがあまり理解できなくて、「なんで?」と小首を傾げた。 「壮ちゃんがヤなことはしたくないよ。壮ちゃんに嫌われたくない」 「……結心って馬鹿?」 「えー、急に? 暗算は得意だよ」 「そうじゃなくて……。」 壮五は、きっと結心はこれまで人の意見をただ聞いて、それに流されるようにして生きていたのだろうと想像する。 嫌われて捨てられないために、相手の望む姿だけを見せていたのだろうと。

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