50 / 54
第50話
「俺はちゃんと結心が好きだから、結心がしたい事を応援したい。」
「!」
「俺に合わせなくていい。自分のしたいことをしなよ。」
壮五がそう言えば、結心はパチパチ瞬きをして、戸惑ったように笑った。
嬉しいのか、そうじゃないのかわからない。
初めてそんなことを言われて、どうすればいいのか分からなかった。
「したいこととか、わかんない」
「結心が楽しいと思うこと、何かない?」
「たのしい……」
ウーンと考えるけれど、特に思いつかない。
ただ、壮五が自分のした事で笑ってくれると、明るい気持ちになるのは知っている。
これが『好き』だということも。
なので好きな人に喜んでもらえるようなことがしたい。
「壮ちゃんが喜んでくれることがしたい」
「……それは、俺は嬉しいけど……」
「今はそれしか思いつかない」
結心はそっと壮五の手を取り、キュッと握る。
迷子の子供みたいな表情が、なんだか少し切なさを産んだ。
ともだちにシェアしよう!