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第50話

「俺はちゃんと結心が好きだから、結心がしたい事を応援したい。」 「!」 「俺に合わせなくていい。自分のしたいことをしなよ。」 壮五がそう言えば、結心はパチパチ瞬きをして、戸惑ったように笑った。 嬉しいのか、そうじゃないのかわからない。 初めてそんなことを言われて、どうすればいいのか分からなかった。 「したいこととか、わかんない」 「結心が楽しいと思うこと、何かない?」 「たのしい……」 ウーンと考えるけれど、特に思いつかない。 ただ、壮五が自分のした事で笑ってくれると、明るい気持ちになるのは知っている。 これが『好き』だということも。 なので好きな人に喜んでもらえるようなことがしたい。 「壮ちゃんが喜んでくれることがしたい」 「……それは、俺は嬉しいけど……」 「今はそれしか思いつかない」 結心はそっと壮五の手を取り、キュッと握る。 迷子の子供みたいな表情が、なんだか少し切なさを産んだ。

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