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「あそこまで言っておいて、急に突き放すじゃねーか⋯⋯」
次の講義が始まる教室で、俊我は思わず声に出てしまっていたが、騒がしい室内にかき消されてしまった。
父親の言う通り、学生の身である自分ができることなんて限られている。今後の出方で、会社の信頼度が低迷していき、俊我が将来的に自身の跡に継ぐという話よりも最悪の場合、生活が成り立たなくなる可能性があるから、報告までに話をしたのだろう。
自分が学生であるのが歯痒い。
今、こんなことを思うなんて、と苦笑を漏らす。
高校生の頃に、今まで継ぐことが当たり前だと思っていたが、その敷かれたレールに沿って、人生が決められていることに嫌気が差して、その運命に背いてやろうと思ったことがあった。
というのも、友人の一言がきっかけだった。
高校に入学してすぐに配られた進路調査票。
その話題で、友人らと将来どうしようかという話になった。
「やることがないし、けど、仕事もしたくないから、とりあえずどっかの大学に行きたいかもなぁ」や「昔から何となしにやっていたギターを極めて、バンドを組もうかなとかは薄ら」とぼんやりとした会話をしていた。
友人らは薄ぼんやりながらも、自分のしてきたことがあって、それを自分で将来を決めていくのだと。
俊我にとって、それは当たり前の選択肢ではなかった。
小野河家の長男として産まれたことで、大学は薬学部に入り、院生で卒業し、父の跡が継いでもいいような実績を得て、次期社長となる。
誰かが書いたシナリオに沿って、俊我はその道を歩く。
俊我にはそれが当たり前だと思っていた。
『俊我はやっぱり、親父さんの会社を継ぐわけでしょ?』
『いいよな、将来がもうすでに決まっていて。アルファで成績は常に上位。しかも、可愛い婚約者なんてもんもいるわけだろ? 人性勝ち組すぎん?』
『俺らはベータだから、努力してもパッとしないっていうか⋯⋯』
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