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12.
「そろそろ時間になるのですけど、ずっとお喋りだけでいいのですか?」
話題が途切れ、他に何かないかとお香の匂いに耐えつつ考えていると、絞り出すようにそう言われた。
「······別にいい。ゆっくりとしていたいんだ」
「はぁ······そうですか」
腑に落ちないと言ったように、気のない返事をして黙り込んでしまった。
そう、静かにしてもらえたらありがたい。
"あいが"の声変わりしているはずなのに、やや高めの声音に意識してないと思われるが、しおらしい言い方に誘われているような錯覚に陥り、今すぐにでもその透けている服を剥いで、透き通るような柔らかい肌を貪りたい欲に駆られるのだから。
本能を現してはならない。
葛藤している最中、終わりを告げるアラームが鳴り響いた。
「また来てくださいね」
その言葉を背に受けながら、部屋を後にした。
ようやっと解放された。
それは"あいが"も同じ気持ちだったようで、見送る言葉に安堵している声音のように聞こえたからだ。
今日、初めて来たのだからそう思われても仕方ない。
これから度々顔を出せば、認識してもらえ、俊我に慣れてくれるだろう。
そう思いながら、振り払うように猥雑な町から風を切って去って行った。
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