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13.
「えと、俊我さん······ですよね。今日もお話をするのですか?」
「ああ」
日を跨がないうちに再び"あいが"の元へ訪れた。
まだ俊我のことに対して緊張しているようで、初めて会った時と同じ行動をしていた。
もう少し緊張が解れないものだろうか。
俊我と同じような客は他にいるはずなのではと思ったりもした。
そんな相手に対しても、このような態度を見せているのだろうか。
けれども、こういう風もそそられると思う輩もいるのだろう。俊我はその気持ちが分からないために、"あいが"の態度に関しては甚だ疑問であった。
会話ですぐに解れないというのなら、他に何か考えた方がいいかもしれない。
俊我はふとそう思った。
しかし、何をすればいいのか。
「こないださ、彼女に欲しがっていたブランドもんのバッグをあげたらめっちゃ喜んでくれてさー」
「あー、そういうの好きだよな。ま、喜んでもらえて良かったな」
廊下を歩いている時、前からやってきた学生らの会話が耳に入った。
そうか、何か物をあげればいいのか。
次の講義まで時間があると思い、手頃な席を見つけた俊我は早速、携帯端末で調べ始めた。
が、検索アプリを開いた時、調べようとする指が止まった。
"あいが"は、何が好きなのか。
先ほどのどこぞの学生らの会話で言っていたブランド物のバッグを検索し、スライドしていたが、イマイチぴんとこなかった。
あの娼年は高級な物というより、もう少し手頃な物が合いそうだった。
略歴を見たからそうだと思ったが、見た目からして華やかな物で着飾るよりも、控えめに添える物の方が似合っているように思えた。
「あたしが送った相手は見つかったわけ?」
小物を検索しては、悩んでいる俊我にズケズケとした物言いをする声が聞こえた。
顔を上げると、向かい側に座る雅の姿が映った。
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