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14.
雅は医学部、俊我は薬学部というのもあり、直接会うことはなかった。
何かのために連絡先は交換したが、するほどでもない、それよりも、極力相手にしたくないと思い、対象と会ったことは言っていなかった。
「一応、見つかったが······」
「なに? なんか不満そうね。あんたの好みのオメガなんて用意してあげないわよ」
「いや、そういうことを言いたいんじゃないんだが」
「だったら何よ」
強い口調で言い返してくる。
やはり相手にしたくないと、心の中でため息を吐いた。
どうしてこうもそのような言い方しか出来ないのかと思いつつ、一人でも助言が欲しいと一応先ほど悩んでいたことを口にした。
すると、退屈そうな顔をした。
「そんなの金をあげておけばいいのよ」
「お前、考える気あるのか?」
「そんなところで働いているオメガなんて、金銭的な理由でしょ。あとは愛でも囁いておけば、すぐにあんたに夢中になるんじゃない?」
聞いて損をしたと言わんばかりに肘をついた。
やはり、こいつに聞くのが馬鹿だったと自分に対しても苛立った。
しかし、こういうことも我慢すれば、いつか望んでいた幸運が訪れることを信じて。
「雅ちゃん、お待たせ」
今はとりあえず、極力話さないようにしようと雅から手元の携帯端末に目を向け、見ていると、控えめな声が聞こえた。
一体誰なんだと、顔を上げた。
垂れ目気味の肩まで伸ばした女子が、雅のそばに立っていた。
「全然。俊我のつまらない話に付き合わされたけど」
「えっと······この人は?」
「いいの。花梨は関わっても意味がないから。人生の無駄にもなるわ。それよりも、講義の時間なんでしょ? いこ」
「う、うん」
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