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15.

散々な言い方をした挙句、花梨と呼んだ女子の手を取り、一瞥することなく去ろうとする雅とは反対に、花梨は軽く会釈をした。 その時になって、彼女が首輪をしていることに気づいた。 "あいが"と同じオメガということか。 しかし、疑問に思った。 「オメガ」と口にすることすら嫌悪している雅が何故、そのような相手と共にしているのか。 気まぐれに"飼っている"のか。 いや、と俊我はその考えを打ち消した。 花梨を見つめる眼差しが、俊我に向ける眼差しとは圧倒的に違った。 そう、それはまるで──。 「それこそ無粋だ」 ハッと鼻で嗤った俊我は、遠ざかっていく二人に背を向けて歩き出した。 ひとまずは雅の適当な案に乗ってみることにした。 今日の講義を終え、その足で例の性風俗店へ向かった。 場所が場所だからか、いつ行っても俊我の他に客がいる気配を感じられなかった。 だが、在籍していることを示す娼年達の写真を見た時、首を傾げた。 "あいが"の値段が上がっていた。 こないだの時はこの値段ではなかったはずだ。 俊我もそれなりに来ているが、他の客も指名しているということか。 人を見る目はないが、他の娼年よりも見目が良く感じられる。 しかし、それは"あいが"が人気であることを示している。 人気ということは、指名が多く、なかなか取りにくいことを意味する。 焦りが募る。 身請け制度があるようで、指名料の倍以上を支払えば、自分のものとして"持ち帰れる"というらしい。 虜になってから、その制度を利用しようと思っていたが、悠長なことをしていられなさそうだ。 けれども、俊我には他に手っ取り早く対象を自分のものにする考えが思いつかなかった。 焦燥に駆られながらも、"あいが"を指名したのであった。

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