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「よく、僕のことを指名······しますよね」 「そうだな」 「しかも、最長時間で······。俊我さんが、僕に会いに来てくれることが嬉しく······思いますよ······?」 「······っ」 出迎えてくれた"あいが"が、ぎこちなさそうに手を取ろうとしていた。 自分より小さくて細い指先に触れられるだけで、離さまいと痛いぐらいに掴み、不釣合いな首輪で隠された首筋に噛みつきたい衝動に駆られ、何とか理性を保っていた。 "仕事"として誘おうとしているのだろう、しかし、"あいが"の仕事を妨害するかのように、小さく震える手をやんわりと離した。 「······あ」と、もしかしたら"あいが"が言ったのかもしれない。拒まれたと口を半開き、自身の手を見つめていた。 「あの······俊我さん······」 「今日も俺の話を聞いてくれないか」 「······はい」 何か言いたげな"あいが"の言葉を遮り、そう言うと対象は俯いた。 悪いことをしてしまった気分だ。 何か一言を口にする前に「ベッドに座りましょうか」と、先に歩いていく。 いつもならば、指先を摘むように繋いで引いてくれるのだが、さすがに気持ちの切り替えが出来ないのだろう。 拒絶されて落ち込んでいる様子の"あいが"に謝罪の言葉を口にするよりも、どうでもいい嘘を交えた話をやや一方的にし始めた。 どうにかくだらない話をしていると、終わりを告げるアラームが鳴り響いた。 ようやく終わった。 指定した時間以上に長く感じ、背中にうっすら汗をかいていた俊我は、気を緩みそうになっていたのを必死に堪えた。 「今日も僕で楽しめたでしょうか」 「ああ、それはもちろんだ」 「満足して頂いて何よりです」 俊我が話している間に気持ちの整理がついたらしく、儚げな笑みを見せた。

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