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こんなにも当惑した顔を見せられると、毎回金銭をあげるのは良くないと改めて思わせる。
とはいえども、いかんせん婚約者にも何かをあげたこともなく関係が絶たれたため、何を喜ばれるのか分からない。
だとしたら、本人に直接訊いた方が妥当だろう。
校内で偶然聞いた、本人が欲しがっていた物をあげて、喜ばれた話のようになればいいと。
封筒を見つめている対象に緊張した面持ちで尋ねた。
「僕が好きなもの······ですか?」
きょとんとした後、考えているような素振りを見せた。
そうして、しばらく考えていた"あいが"は恐る恐ると言ったようにこう口にした。
「僕、物が好きというのもなくて······強いて言いましたら、身体で愛を示して頂ければ······」
恥じらうように言う"あいが"に初々しいと思った。
いつまでもこのような感じであるから、この店で一番人気なのだろう。
お香も相まって、雰囲気に呑まれそうになる。
「······訊いておいてなんだが、お前の欲しがっているものはあげられそうにない」
絞り出すように返した。
あまりにも自分が情けない。
しかし、身体を重ねるわけにはいかない。
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