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22.
「小野河製薬会社の息子って、お前のこと?」
先程の講義の内容を復習していると、そのような声を掛けられた。
ちらり、と見やると薄ら笑いを浮かべた男が二人並んでいた。
全く見たことがない奴らだった。
「そうだとしたら、何か用か?」
「いやぁ、落ちぶれた人間が、何でいつまでも華園院様の元で無駄に勉強を頑張っているのかなって」
そういうことか。
心の中で嘲笑し、興味が失せたようにノートに目を映した。
「ご忠告どうも」
「そのご忠告をしてやったのだから、素直に従って欲しいものだな」
「生憎、お前らのような華園院様の下僕に素直に従うものじゃないんでね。それに、うちがどんな状況であれ、勉強する権利は俺にあって、お前らではない」
煩わしくなってくるなと察した俊我は、勉強道具を片付けていった。
が、それを机から落とされ、阻害される。
「ざっけんな! 目障りなんだよ! あのお方と図々しく話しやがって! 落ちぶれた奴が気安く近づくなよ!」
本性を現したか。
相手にわざとらしくため息を吐きつつ、落とされた物を拾っていた。
そのため息に対しても気が障ったようで、拾っている間にも品性を疑う罵声を上げていた。
周りの喧騒が静かになっていき、目の前の奴の面白くない声がよく聞こえる。
いい歳してガキ臭い。
「お前って、どこの会社の人間だ」
「あ"? 知らないのか。俺は──」
「俺の会社が落ちぶれても尚、上位にいるような会社なのか? いや、そうでなくとも底辺な会社なんだろうな。周りを気にせず、下品な言葉を吐く会社の御曹司様なんだからな」
「⋯⋯っ!」
すました顔を添えてみせる。
すると、図星だったようで、顔が一気に赤くなり、言い返す言葉がないようで、ただ怒りで震えていた。
いい気味だ。
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