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24.代わりの娼年"はるか"
「⋯⋯余計なことを考えるな。今は俺が出来る限りのことをしろ」
己を言い聞かせると、気持ちを切り替えようと再度他の写真を見る。
せっかく来たのに、このまま帰るのももったいないと思った俊我は、すぐに目に止まった相手を見た。
まだ十代始め頃のような、やや子どもっぽい顔立ちであったが、目が大きめで可愛らしく見えた。
それはどことなく"あいが"に似ていた。
そう思いたった途端、俊我はその相手を指名した。
「えーと、初めましてお客さま? ぼくは"はるか"って言います」
通された部屋に入ると、ベッドに座っていた娼年が緊張気味で自己紹介した。
写真に『初物』と書かれていたが、働くのが初めてということなのか。
他の娼年よりも随分手頃な価格であったから、そうなのだろう。
「俺は俊我。よろしく」
目線を外して、手短に言った。
今日が初めてであるから緊張しているのかもしれないが、その中に怯えも感じ取られ、また目つきの悪さで怖がらせてしまっているなと苦笑した。
初めて会った時の"あいが"のようだ。
「あ⋯⋯と、その⋯⋯最初は、一緒にお風呂に入るんだったっけ⋯⋯。それとも、キス⋯⋯? しゅんがさん? は何をしたら悦びますか?」
小首を傾げて訊いてくる。
不慣れさが初々しく感じられるが、それがどことなく危うい。
「人によっては、お前のその反応は悦ばれるかもしれないが、俺はどうもその気にはなれなくてな」
「そうなんですか⋯⋯ぼくはどうしたら⋯⋯」
「俺の時だけはそのようなことをしなくていい。とはいえども、今回しか会わないかもしれないけどな」
「はぁ⋯⋯では、何をしたら⋯⋯」
何を。
このような所では、身体で語り合うのが普通のことだ。そうと教えられたのだろう。
困惑する相手に場違いな言葉を口にする。
「話でもしないか」
「はなし⋯⋯?」
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