困惑の色が濃くなった。 無理もない。初めて取る客がそのようなことを言うと思わなかったのだろう。 この目の前の娼年より客と相手していた"あいが"でさえ、そのような反応をしていたのだから。 「え⋯⋯っと、何を話しましょう」 「そうだな⋯⋯」 別に"あいが"に話している内容をそっくりそのまま話してもいい。特に話題が作れない俊我は、そうでもしないと間が持たない。 それよりもこの娼年のことについて尋ねてみようか。 「はるかと言ったか。お前は今日が初めての仕事なのか？」 「ぼくもよく分かってないのですが、そうみたいですね」 「分かってない⋯⋯？ お前が望んでこの仕事をしているわけではないのか」 「本当は仕事できる年齢ではないですし。ただお店の前を歩いていたら、声を掛けられただけで⋯⋯」 娼年が迷うような口調でぽつぽつと話し始めた。 オメガとなり、学校や家が居心地悪く感じた娼年は、気づけば家を飛び出したのだという。 しかし、行く宛てもない娼年は町をさまよい、これからどうしようかと思っている時、この店らしき人に声を掛けられたのだという。 「疲れた顔をしているから休んでいけばと言われたのですが、ぼくはそういうわけにはいかないと断ろうとしましたが、断るまもなく無理やり店に連れて行かれて⋯⋯」 言葉が震えていた。 口にすることも憚れる、俊我の想像を絶することをされたのかもしれない。 「⋯⋯軽はずみな言動だったな」 急いで首を横に振った。 「⋯⋯きっと出られないから、誰か一人でも、ぼくのしょうもない話に聞いてもらえて嬉しく思います」 娼年の言葉を遅れて理解した。 「出られない？ どうしてだ」 客が倍以上の金銭を支払って、お待ち帰りはできるが、働いている側は出退勤という形ではないのか。 こんな素朴な疑問でさえも彼を傷つけてしまうことではないかと思い、しかし、気になってしまい、訂正しようかと迷っている中、娼年は言った。